思考誘導
コロナに関連する事を書こうと思ったが、別のアイディアが思いついたので、そちらの話を書いていく。
読者の方々は引き続き、STAY HOME をお楽しみください。
さて、思考誘導についての話をしよう。
ミスディレクションという言葉を聞いたことがあるかもしれない。
マジックが好きな人ならば、聞いたことがあるだろう。
他にも、ミステリが好きな人や、黒子のバスケットが好きだった人ならピンと来たかもしれない。
多かれ少なかれ、人間というのは受け取った情報に何かしら反応をする。
この習性を利用して様々な方法で相手の視線や考えなどを
これを将棋で実現出来ないだろうかというのが今回の話の趣旨だ。
将棋というのは様々な定跡を元に様々な戦法が展開され、そして指されていく。
そして、未知の領域に到達してからが勝負みたいになっているのがここ数年の傾向である。
AI の登場により様々な定跡の可能性が潰されているが、それでも尚将棋に魅せられてやまない人たちは多い。
他ならぬ私自身もそうである。
将棋の全ての手を網羅すれば恐らく「究極の答え」としての 1 手が出てくるのだろうけれども、それはまだまだ先の話である事が分かってきたからだ。
現在の将棋 AI の限界すら見えつつある。というのも、結局の所今の将棋 AI だって読み込んでいる手数は有限であるため、限界があるのだ。
手数だけでなく局面だって有限だ。後は、その指向性が偏ってるか否か程度ある。
一方、人間は指向性が大幅に偏っているものの、読み込む手数と局面に関しては明らかに AI を超える場面がある。
近年目覚ましい手の一つとして、藤井聡太七段(2020 年 5 月現在)が指した7七同飛成は AI にすら読めなかった手の一つである。
特化した人間の読みの深さに関して、まだまだ機械は追いついてはいない。
コンピュータ選手権を見るとやねうら王エンジンが隆盛を極めているが、それもいつまで続くか分からない。これは、Bonanza が席巻していたのと同じ現象である。
つまり、今のコンピュータ将棋も一つの賢いエンジンが出るだけであっという間にまた一歩進んでいってしまう可能性を持っているという事だ。
そこで考えたのは、思考誘導である。
例えどれだけ能力の高いエンジンだとしても、その思考が誘導された場合、AI 的には評価が高い手を指し続けてそれでも負けてしまうという事があるのではなかろうか。
もちろん、それを指す側にその AI に対する深い理解が伴っていなければ意味が無いが。
同じ様に、というか恐らくこちらが先なのだが、人間同士の対局も結構思考誘導が混じっていると私は考えている。
俗に言う「手の流れ」だが、これは将棋を指し慣れている人たちだとある程度の変化までは「想定の範囲内」であり、そこからずれた手を指されるとそこで考え込んでしまうという事がある。
もしそれを意図的に行っている「人」が現れたらきっとその人は相当勝つだろう。
でも、それはなんというか、将棋をやるというよりは、将棋を指す人を打ち負かすようなゲームになってしまい、本来の将棋から大分ずれた戦い方になってしまう気がする。
とはいえ、それが出来る人ならば、どんな勝負でも絶対に勝ってしまうのではないだろうか。
それが例え機械だったとしても、機械の「思考」を「評価値」を誘導してハメてしまう事は出来ない事ではない。
メタゲーム感が出てくるような考え方だが、実際にそういう「勝ち方」はあるだろうし、私自身はそういう方法で勝つのは悪くないと思っている。
問題は、そういう勝ち方が恐ろしいほど難度が高いという事だろうか。
一体どれほどのエネルギーと思考力をつぎ込めばそういう事が出来るのだろうか。
将来この文章を読んだ子供がそれこそ幼い時から打ち込んでやらない限り絶対に出来ない手法だろうから、これはあくまでも可能性という名の妄想で終わるのである。
時間が無限にあるとしたら、そういう勝ち方を研究するような人がいてもおかしくない気がする。
仮に、そういう人が出てきた時、果たしてコンピュータはその人の稚気、あるいは悪意まで読み取ることが出来るのだろうか。
いや、出来ない。そういう人間に勝つことが出来るのは、やはり同じ土台に立っている人間だけだろう。
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