生首に聞いてみろ読みました 法月綸太郎の久々の長編という事で気になっていたけれども、中々手を出せなかった。待ち焦がれていた作品でもあって、期待をふくらませて読み始めた。法月作品らしく、衝撃は少なく緩やかに物語は進む。刺激的な小説が増えた中で、こういう穏やかな立ち上がりは珍しい。 そして、本書を半分ほど進めてようやくギアが1段アップされる。読者が待っていた「事件」が起きる訳だ。そしてその事件をきっかけに徐々に徐々に伏線が散りばめられていく。緩やかに思える前半にもそれは充分にあるのだが、それよりもやはり、ミステリーは「事件」あってこそだ。 このような、残酷な読者の渇望を満たすために、作家法月綸太郎は苦心に苦心を重ねてたくさんの謎を解く手がかりを散りばめる。ミステリーを読み慣れていない人、あるいは少しだけしか読んでない人には散りばめられた謎に気づかずに読み進めてしまう。しかも、気づかなくても大筋の所では問題ないように話が進んで行くのが憎い。 作中探偵の法月綸太郎は後期クイーン問題を抱えつつも、真相へたどり着こうともがく。無責任な読者は作中探偵に対して何度もこう思うはずだ。「何をしてるんだ」「間抜けか」「本当に名探偵なのか」と。いや、彼は名探偵なのだ。名探偵だからこそ、読者が知っている情報を知らない上でああいった行動を取るしか無いのだ。 こうして、読者はメタ視点で物語を読み進め、ようやく名探偵が名探偵として振る舞える舞台が整う。しかし、多くの読者はここで飽きている。これだけの「謎」の為に、ここまでの大量の文章を費やす必要があったのかと。 必要があるのだ。なぜなら、法月綸太郎はあくまでもフェアであろうとするから。死にゆく本格を、彼は心底愛してるからこそ、ここまで文字を積み上げ、嫌々ながらも法月綸太郎を狂言回しとして回し、そしてラストへと読者を導くのだ。ただ、読者というのは実に我儘の上、理解力が大いに欠けてる連中が多い。故に、作者としての法月綸太郎の苦労はわからないし、探偵としての法月綸太郎の苦労も理解出来ない。 いずれにせよ、今回もまた『名探偵』法月綸太郎が事件の最大のミステリーを解き明かす所でこの物語は終焉を迎える。それは一言で言えば「悲しい」終わり方であった。願わくば、そのような終わり方は避けて欲しかった。 しかし、全てのピースを、フェアに積み上げて組み上げると、このよう