Windows 版 gVim をアンインストールした話
以前に、Windows11 on WSL2 + wezterm + Neovim = 最強開発環境という痛々しい記事を書いたのだが、その続きの記事と言っても過言ではない。
この記事は Vim 駅伝の 3 月 1 日の記事である。 前回はぺりーさんのnetrw を使うためにという記事だった。 次回は kuuote さんの Vim 側の組み込みプラグインを無効化するハック という記事である。
gVim との付き合い
思い返してみると、gVim との付き合いは大分長くなった。エディタとしては自分の人生の中で最も長く付き合ってきたエディタと言える。Vim のインターフェースとして gVim を何度も使ってきた。自分の手持ちのマシンは Windows なので、必然的に gVim を選択肢として選ぶ必要があった。
gVim の良さは何か。それは、Windows とのシームレスな関係であり、Windows OS の機能をそのまま使いたい場合に有用である。かつての自分にとってこの部分は非常に重要であった。具体的には、印刷機能と画面半透明化機能であり、これが無いとやってられないという認識であった。
しかし、時代が進み、自分の技術力の向上や考え方の変化、さらに Vim 周りのプラグインの更新が進むと gVim で運用していく事がだんだんと億劫になっていったというのが事実である。故に、WSL2 上で動く Neovim の快適さに心が打ち震えたのである。
技術力の向上に伴う考え方の変化
かつての自分は何でも gVim で処理したいなと考えていた。メールを見たり天気を見たり、Twitter を見たりするのに、gVim を活用していた。かつての Emacs 使いの guru のような立ち位置を目指していたというのがある。2000 年代初頭にインターネットに多少なりとも触れていた人ならば、「それ Pla」という古の単語を思い浮かべるかもしれない。この概念を持ち出すのはあまりにも古すぎるが、結局言いたいのは、1 つの手法で全部をこなすという考え方だ。ネットを見るのにわざわざブラウザに切り替えるのはもったいないという今となっては情熱に似た何かを当時は多くの人が持っていた。
しかし、自分自身の技術力が伸びていくと、「それ Pla」は所詮一つのパラダイムでしかなかったという考えに至る。Emacs の中でなんでもやる、それ Plagger で出来るよ、それ gVim でなんでも出来るよというのは、ある一定期間においては自分の能力を伸ばしていくのに必要な成長痛みたいなもので、コンピュータに触れた人が通る道であり、それが悪いとは言わない。しかし、それにこだわり続けるのはやっぱり良くないなと思っている。
適材適所という言葉の通り、もっと効率の良いアプリケーションでこなせるものはこなしていけば良いのだ。この効率の良いアプリケーションというのが癖のある言い方で、「自分にとって」という枕詞をつけると途端に、その人にとっての最適解が変わってしまう。実際の所、今自分が実現している WezTerm+NeoVim という組み合わせも、「現在の ArcCosine 氏」にとっての最適解であり、未来の僕にとっての最適解かどうかは不明である。
ゆえに、一手法にこだわり続けずに、より快適に、より高速に、より便利に使える方法が出てくるなら未来の僕はあっさりと今の「自分」を手放すだろう。そういう考え方になった
プラグイン周りの変更
Vim 周りはやはりプラグイン問題が色々とあって、様々な補助言語を使ってプラグインを実装するのが常となっている。ピュア VimScript や Lua、Python がそれを推し進めていたが、現状は Deno による実装がかなり増えてきたなという印象だ。やはり、denops.vimの存在は大きい。TypeScript による開発体験が開発者にとって心地よく、その上、ファイル 1 個追加するだけで動くというのがとにかく楽だ。自分ですら簡単にプラグインを作れたという体験も大きい。昨今は Node.js ベースの様々な開発環境が進んでいて、Web と Terminal の世界がシームレスになりつつあるなと感じている。これは、Web 側が寄ってきたというよりは Terminal 側がぐっと Web 側により掛かるようになった、あるいはより掛かれるようになってきたからなのかもしれない。
いずれにせよ、gVim にこだわる理由が一つ減ったというのは事実である。自分はとにかく Python 周りで苦労した覚えがあるので、それが軽減されるのは素晴らしい体験であった。
WSL2 と WezTerm
WSL2 を快適に使う上で僕にとって WezTerm は欠かせない存在である。もちろん、普通に WindowsTerminal を使っても良いが、WezTerm のなんとなくハッキングしている感が好きなのである。かなり年齢を重ねている癖に未だに厨二病患者かよと考える方もおられるだろうが、仕方がない、これは不治の病なのである。
WSL2 は実質 Linux なので、Terminal 世界へのアクセスがめちゃくちゃ楽である。Windows でこんなに簡単に Linux に触る事が出来るようになったのは革命であり、自分でサーバを立てるとか、どこかのレンタルサーバを借りるとか VPS 使うとかそういうのを一切合切やらなくて良くなったのは、本当に素晴らしい。サティア・ナデラありがとう。
ナデラ体制になってから、Windows は思いっきり Linux 側に寄せるようになってきて、これが開発者にとってマジで革命的であった。自分は、かつての MicroSoft は嫌いだったが、今の MicroSoft は好きである。自分たちの強みを活かしつつ、技術においてリスペクトすべき所はきちんとリスペクトするという姿勢が伝わってくるからだ。そういう宣伝なのかもしれないが、少なくとも以前はそういう姿勢では無かった。天狗になっていた MicroSoft はもういない。トップが変われば組織が変わるのは、よくある話であるが、ここまで顕著に変わるという例もなかなか珍しいと思う。
WezTerm と Vim の設定
WezTerm で WSL2 をシームレスに使うために、 ~/.config/wezterm/wezterm.luaはこんな設定にしている
local wezterm = require 'wezterm'
local act = wezterm.action
return {
default_prog = {
'C:/WINDOWS/system32/wsl.exe', '~', '-d', 'Ubuntu'
},
use_ime = true,
keys = {
{ key = 'v', mods = 'SHIFT|CTRL', action = act.PasteFrom 'Clipboard' },
},
mouse_bindings = {
{
event = { Down = { streak = 1, button = 'Middle' } },
mods = 'NONE',
action = act.PasteFrom 'Clipboard',
}
},
window_background_opacity = 1,
font = wezterm.font('HackGen Console NF',{ weight='Regular', italic=false}),
font_size = 21.0,
enable_scroll_bar = true
}
見ての通り、特に複雑なことはしていない。Windows のクリップボード情報から貼り付ける時に、Ctrl+Shit+V を通しているくらいだ。 vim 側も特に変わったことはしていないが、
set clipboard+=unnamed,unnamedplus
をする事で、vim で yank したコードをクリップボードに入れて運用するぐらいの事はしている。
gVim をアンインストールした日
2024 年 2 月 15 日の夜、この記事をエントリーした日に僕は gVim をアンインストールした。ついでに、Windows 版の NeoVim もアンインストールした。もう GUI ベースの Vim はいらない。そう自信を持って言える生活を出来るようになった。
考えてみると、1 年間 WezTerm 上の NeoVim でずっと開発をしたり、記事を書いたりしていた。開発サーバの立ち上げも Shell からサクッと起動してそのまま思考停止でコードを書いていける。自分にとっては大きな変化の年だったと言える。
これから先、さらに良い開発環境が整うならばそちらに飛び込んでいくつもりである。手垢のついた慣れ親しんだ環境を捨てるというのは思い切りも必要だが、やる価値は十分にあると思う。
プログラマ 35 歳限界説は、嘘であり、また事実でもあると思う。35 歳で限界に到達する人は、自分が積み上げてきたものを躊躇なく捨てられない人の事であり、それはそれでまた美徳であるため、僕は批判するつもりは一切ない。そういう人間も、この世界には必要だ。ただ、プログラマという職業を選び、それを文字通り「生涯現役」でやる覚悟がある方ならば、自分が積み上げてきたものをサクッと捨てられる能力が必要だと思う。それが出来る人ならば、限界は越えられるだろう。それが出来るかどうかが適正なんだと自分は思っている。
gVim よありがとう、そして Terminal 版の NeoVim よ、これからもよろしく。齢 40 を越えて尚、僕が成長を感じられるのは、素晴らしい開発環境のお陰である。こういう感謝の気持ちを今後も忘れずに開発を続けたいと思う。
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