名探偵にさよならをの読書感想
小西マサテルさんの、『名探偵のままでいて』シリーズの最終巻を読みました。
名探偵のままでいてシリーズは、過去にも感想ブログを書いていますが、このシリーズは読みやすい、謎の粒度がちょうどいい、人間関係模様の描き方が気になるという感じで、端的に言えばよくまとまった読みやすいミステリと言えます。ミステリに慣れていない人が一番楽しめる難易度なので、比較的万人にオススメしやすいです。殺人もあまり出てこないので、それが苦手だという人にも良いのかも。
前作までの感想は下記の通り。
最終巻ネタバレ
最終巻は、殺人事件と殺人未遂事件が出てくるため、このシリーズを読んできたファンからするとぎょっとする内容になっています。ミステリファンとしては大変ライト(?)な事件なので、そこまでうわっと思うような内容では無いのですが、苦手な人は苦手かもしれませんね。
さて、表題から匂わせされている名探偵にさよならをという文言からおじいちゃんが死んでしまうんではないかと不安になる人も多いかもしれませんが、大丈夫です。おじいちゃんは死にません。最後の最後まで生きています。安心して読みましょう。
とは言え、死にそうになる事件にまきこまれますし、ここで死んでもかまわないぐらいの勢いで犯人と対峙するので、危なっかしいです。案外血の気が多かったりしますよね、楓のおじいちゃん。
閑話休題
この巻では、ぽっと出の謎医者が出てきて、犯罪教唆をする事が合間合間に挟み込まれます。読者にはこれはつながっている話ですよという事を提示しつつ、登場人物にはそれが分からないという構造になっていて、短い中で相変わらずテクニカルな事をやってるなと思わせます。長さの関係上トリックもかなりシンプルなものが多く、どうやってそれをやったのかを見破るのはそこまで難しくは無いです。知識さえあれば結構解ける謎が多いです。その上で、謎医者の正体は誰なのかが意外な形で提示されていますが、この正体に関してはかなり無理矢理感が強かったです。驚き度は大きいのですが、同時に大分「無理くせ~~」と感じさせてしまいます。謎医者の正体が小林だというのが最後の方で明かされるのですが、年齢が21歳、米軍基地に医院を構えている精神科医というギリギリありえそうでありえない正体なので、ここの詰め方が下手だったなーと思います。例えば、美容整形医師で実年齢は29歳ぐらいで顔を超童顔にしていましたみたいな方がまだファンタジー色を薄められたのかなと思ったのですが、これくらい無理な設定のほうがこれはお話ですよというのが強調されて良かったのかもしれませんね。
リドル・ストーリーの結果
この巻で、楓がどちらを選んだかが分かるのだが、それは四季の方だった。ある意味露骨というか、わかり易すぎるというか。
これらの事を総合すると、恐らく楓の心を捉えているのは四季であると僕は結論する。
前巻の時点で、僕はこう結論していたので、一応推理は当たった形になるのだが、これくらい読んだ人の8割以上は当てられるだろう。言っては悪いが、イケメンと美女の組み合わせだ。なるべくしてなったとも言うべきか。 ちなみに、
イケメン後輩か、堅実な同僚か。主人公がどちらを選んだのかを考えるが楽しい作りになっている。個人的には、共通点の多い方を主人公が選ぶと思っている。
これが、第1巻を読んだ時の感想だけれども、この時点では岩田の方を選ぶのではないだろうかと僕は勝手に思っていた。そうした方が「意外」だからだ。でも、この作品はそういう「意外」は選ばないのが偉かった。物語として妥当というべき場所に人間関係は落としつつ、意外さはミステリの方に集約するという手腕は本当によく出来ていると思っている。ここを変に捻らなかったのは正しいと思う。僕が面白いと思うかどうかは別として、万人にウケる内容にしないと、ここまで広まらなかっただろうしね。
という事で、一応この恋路にも綺麗にオチがついたので、恋愛ものとして読んでいた人も満足できる内容ではないだろうか。
最後の演出
最後は、楓が劇の脚本を描いて、祖父に見せるというものになっているが、その劇のタイトルが最終ページに表示される。それが
「名探偵のままでいて」
これがぐっと来る演出になっていた。これが来るとわかっていても、感動してしまったのは僕が年相応に年齢を重ねているからかもしれない。
認知症が進んでいる名探偵であるおじいちゃんに、いつまでも名探偵でいて欲しい。1巻の時にも使われたけれども、最終巻はより一層この願いの重みが加わっているのが憎いなと思った。
他にも細かな演出が色々と散りばめられていて、短い中に情報濃度を適度に上げて詰め込んでいるのはすごいなと改めて感じた。結構古いミステリ作品が列挙されているのも相変わらずで、ミステリファンも所々でニヤリとできるのがこのシリーズのいいところだったと思う。
本当に綺麗に完結したので、これ以上の物語はいらないが、周辺の短編をちょこちょこ書いて、短い短編集を1冊だせるかなくらいの魅力がある。ただ、下手に続編を作ったり、無理やり世界観を広げたりすると大ゴケすると思うので、ぜひともこれで綺麗に身を引いてくれると助かるなと思った。

コメント
コメントを投稿