エレファントヘッドを読んだのでそのネタバレ感想
白井智之のエレファントヘッドを読んだので、それのネタバレ感想を書く。ネタバレ禁止と言われている本書なので、未読の人は回れ右して、ブラウザバック推奨。
あらすじ
精神科医の
このあらすじはChatGPTにまとめさせた。
世界観の説明
エレファントヘッドは、いわゆる特殊設定ミステリと呼ばれるミステリだ。この小説には、現実世界とは違うルールが設定されている。その部分をまず説明する。本作のギミックとしてシスマという名前の麻薬が出てくる。これを自分に注射すると、以下のようなルールが発現する。
シスマによる時間遡行と世界線の分岐
シスマを注射すると、50%の確率で5時間前に時間遡行する。時間遡行に成功した場合と失敗した場合で世界線が分岐し、それぞれの世界で別々の人生が進行する。分岐した自分同士の意識共有
異なる世界線に存在する自分同士は、睡眠中に夢の中で接触し、互いの状況や情報を共有できる。平行世界間における死の連鎖
ある世界線で特定の人物が死亡すると、ほかの世界線にいる同一人物も連鎖的に死亡する。その際、死因も共通する。
このルールの元に、非常に不可解な死が連鎖的に生じる。主に死ぬのは、主人公象山の家族たちだが、一体誰が殺したのかというのが主な謎となるが、実際にはどうやって殺したのかに謎の中心が置かれる。これが相当に凝っていて、上記にまとめた3つのルールが複雑に噛み合うことで、想定外の殺し方が次々と出てくる。そして、その殺し方が分かる前にいわゆる多重解決推理が披露されて、一瞬納得仕掛けるものの、違和感があるという答えが提示されるので、ますます混乱が生じるというのがこの小説の見どころだろう。
主人公の象山について
ちなみに、世界線を渡り歩くのは主人公の象山。精神科医という肩書を持っているものの、物語が進むに連れて、ものすごいサイコパスである事が明らかになり、倫理観0の男である事が露呈していく。人は平然と殺すし、殺した後の処理を人に任せるし、脅すし、男をレイプするなどなど、とにかくロクでもないヤツだ。お前は、蓮実聖司かw
そいつとそいつのコピーが複数出てきて、平行世界で自分の家族を思いもよらぬ方法で殺し、自分の中の誰がそれを実行したのか、推理を披露していく。物語は基本的に象山たち中心で進んでいくが、エログロ要素が散りばめられている事と、象山自身がそれに耐性がありすぎるため、読んでいてものすごい違和感を感じるのもまた事実。前半では家族を大事にしていると嘯いているのもこちらの違和感や嫌悪感を煽るような内容になっている。というか、冷静に考えてみると、犯人は平行世界の自分だし、探偵も平行世界の自分という実質、象山だけで物語が完結していて、胸糞悪い内容なのに、自業自得だろみたいな感覚もあり、妙な読後感を味わうことが出来るようになっている
狂言回しの探偵
こうして一見すると完全犯罪が成立したかに見せかけるのだが、狂言回しの探偵が登場する。それが、象山の担当患者であった裏島だ。裏島も象山と同じように並行世界を見ることが出来る能力者なのだが、こいつの能力取得が物語の中で、ちゃんと提示されていて、どうやってそうなったのかも描かれている。あれも伏線だったのかと驚くこと間違いなし。
この裏島はポジション的には銘探偵メルカトル鮎みたいなヤツだ。読者と同じ立場という風を装っているが、きちんとイカれている。ちなみに、裏島が暴いた殺人方法だが、平行世界にいる人物を操って殺す、平行世界で生まれた赤ん坊を爆破して殺すといっためちゃくちゃな内容であり、論理的には可能だけれども、倫理的に出来るわけねーだろといった内容になっている。それを裏島が提示された情報を元に暴くのだが、この裏島自身も相当に狂っているので、狂人が狂人を追い詰める構図があまりにも酷いといえる。そもそも、コーギーにチョークスリーパーするな。という事で、この作品を回すキャラクターは全員狂人というミステリの中でも相当な異色作である事が分かる。
全体を通した感想
特殊設定ミステリは、僕自身すごく好きなジャンルで、読み終えた後、STEINS;GATEや、七回死んだ男を読んだ時と同じような感覚を味わった。と同時に、それらの作品とは全く違うベツモノという感覚も強くある。殺戮に至る病の方が、ジャンルとしては近いのかもしれない。何にせよ、これはミステリマニア向けの本であり、ミステリ初心者には到底オススメ出来ない本だなと感じた。
編集後記
白井智之は、以前に名探偵のいけにえを読んだことがあり、あれもアレですごいミステリだった事を思い出した。名探偵のいけにえはいろいろなミステリ要素を詰め込んだ作品で、バラエティに飛んでいた。本作のエレファントヘッドは、多重解決とメタ推理に絞っているので、推理方法そのものは非常にシンプルな形になっている。だが、それ以上に並行世界を同時にイメージすることの難しさと、連鎖反応で死ぬというルールが状況をかなり分かりづらくしているのが、すごいと感じた。
作者は一体何を食べたらこんな事を思いついたのだろうか。読んだイメージとしては、赤ん坊を爆破させて連鎖反応で殺すというギミックが一番最初に思い浮かび、その後設定を膨らませていったと思う。赤ん坊を使ったトリックというイメージでは、すべてがFになるに近いものを感じた。あっちは赤ちゃんがある程度成長してから殺されているけれど。密室から人が出る方法として、生まれた子どもを使うというのは、すごく衝撃的な内容だったけれど、こっちは引きずり出した子どもを爆弾で爆破させるというさらに酷い内容なので、そういうのが苦手な人は本当に駄目だろうなと思った。
そして、そんな酷い方法が選ばれているにも関わらず、ロジックとして、つまり論理的にはそういうのもあるんだなーと思うくらいには、僕はミステリに脳みそが焼かれています。

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