大どんでん返しミステリ
42年間ミステリ読み続けてるミスおじが、今でも「あー!コレって記憶消してからもう一度読みたいヤツや!」ってなってる大どんでん返しの傑作たちを紹介
Togetterでこんな話題があったので、自分なりにオススメポイントなどを書こうと思う。
「十角館の殺人」綾辻行人
オススメ度:★★★★★
Good Point
現代日本のミステリにおける金字塔。十角館の殺人BeforeAfterと言われるほど影響力が大きい。それまでの「ミステリ」というジャンルを大きく塗り替えた作品である。みんなが内容を知っているからこそ、まだ知らない人は幸せ。
Bad Point
あまりにも有名になりすぎているので、未読でも内容を知ってる可能性がある。キャラクターの名前付けがミステリ好きに偏っているので、元ネタを知らない人からすると、ちょっと分かりづらい。
「殺戮にいたる病」我孫子武丸
オススメ度:★★★★
Good Point
ひっかかる人は100%ひっかかるし、衝撃度は騙されると分かった上で読んでも衝撃的。一旦読み始めると、もう読む手が止まらない。短いので、あっという間に読み切れる。
Bad Point
グロ耐性がない人には厳しい内容。残酷描写がかなりキツく、臨場感があり、駄目な人は駄目。それを乗り越えられるかどうかはかなり厳しいと思う。
「イニシエーション・ラブ」乾くるみ
オススメ度:★★★★
Good Point
普通に読むと、普通の恋愛小説として読める。何も分からずに、最後まで読んで終わる人も多いと思う。ネタバレされて初めて気がつくという人もいるかもしれない。それくらい精緻に文章が組み込まれている。
Bad Point
Good Pointをそのままひっくり返すように、違和感を感じられない作りになっているので、最後まで読んでも意味が分からないという結論になる人が一定数いる。途中で気がつく人は相当に冴えているが、途中で気がつくと途端に、話の内容が陳腐化してしまう両刃の剣。
「葉桜の季節に君を想うということ」歌野晶午
オススメ度:★★★★
Good Point
ネタバラシされた時に「そうか、小説にしか出来ないじゃんコレ」ってなるのが最高に気持ちいい。騙されたとしても全く不快感がない。むしろ、この描写ってそういう事だったのかという新たな発見がある。内容としても、青春ミステリ色が強く、「そうそう、青春ってこうじゃん」という気持ちになる。
Bad Point
話がやや単調な割に長いので、長編を読むのに慣れていない人にはオススメ出来ない。映像化も漫画化も不可能というかなり特殊な構成になっているので、どう頑張っても小説で読むしか無いのがきつい。青春物ではあるが、それだけで読者を引っ張っていくパワーが無いのが一番辛い。
「連続殺人鬼カエル男」中山七里
オススメ度:★★★★
Good Point
とても読みやすい。騙され方もキレイ。余計な情報も少ないと、入門編としてかなり精錬されている。普通に読みすすめる事が出来る。イメージとしては、殺戮に至る病のマイルド版。
Bad Point
マイルド版とは書いたが、やはり痛い方面での残酷描写が随所にあり、そういうのをイメージしちゃう人には厳しいかも。キャラクターのインパクトが薄いため、キャラ小説として読もうとすると、厳しい側面がある。
「medium 霊媒探偵城塚翡翠」相沢沙呼
オススメ度:★★★
Good Point
キャラ小説として読むならば、この中に挙げられている中では最高峰に位置する。平成後期の良さが存分に詰まっていて、読んでいて「えっ、マジで?!」ってなる。気持ちよくひっくり返してくれるので、読後感が非常に良い。
Bad Point
キャラのパワーが強いという事は、それだけ本編のパワーが弱い事の裏返し。ストーリーそのものの面白さはかなり少ない。キャラパワーだけで読ませるので、キャラに魅力を感じなかったら最後まで読まれない可能性が高い。
「アルバトロスは羽ばたかない」七河迦南
未読
「方舟」夕木春央
オススメ度:★★
Good Point
かなり変則的な密室殺人事件現場という事で、ミステリとしてかなり難しい領域に挑戦している。最後のひっくり返し方は、今までに無かったパターンなので、ミステリファンの間でかなり話題になった。結末が好きな人は「これこそ人間だ」と絶賛している。
Bad Point
結末の好みが好き嫌い、真っ二つに分かれる話なので、このエンドを肯定する人、否定する人色々いる。僕は否定する側で、この結末は嫌い。後、作者の私怨が作品にかなり込められているのを感じる文章&内容で、それを読み取ってしまうと、面白さはさらに半減する。エンタメとして割り切って読む事推奨。一旦それに引っかかると、あー、そういう事なのねーみたいになってしまう。
「ハサミ男」殊能将之
オススメ度:★★★★★
Good Point
ダメ出しする人はダメ出しするかもだけれど、自分は記憶が残っていても何度も読み直しているくらい好きな作品。一番のオススメ。とにかく構成が秀逸。真実が分かった状態で読み直しても、好きなくらい話がまとまっている。方向性としては方舟と一緒なのだが、こちらは読後感が良かったので、こればかりは、好みの話になるのかなという感じ。
Bad Point
分かる人にはすぐ分かるひっくり返し方なので、期待して読んで期待外れだったという人が一定数存在するし、観測している。ひっくり返し方の種類を知っている人は読まなくてもいいと思う。あと、作者が既に鬼籍に入っているため、これ以上作品数が増えないというのが一番のBad Pointなのかもしれない。
まとめ
大どんでん返しがあると、ネタバレされて嫌だという人がいるけれど、そもそもお前にはその「ネタ」が分かるわけ無いだろ、というのが僕の正直な感想です。
相当数の人が騙されているという事は、それだけ上手な伏線がちゃんと散りばめられた作品群なので、まだ読んだことがない人は手にとって読むことをオススメします。
個人的には
- 十角館の殺人
- ハサミ男
- 桜の季節に君を想うということ
の順でオススメしたい。少なくともこの3冊を上から順に読んでおくと、大どんでん返しの気持ちよさを体験出来た上で、読みにくいその他の作品を読めると思う。
ただ、上記3冊も大分古くなっているので、新しさ(最近の話題作)という点で考えると
- 方舟
- medium 霊媒探偵城塚翡翠
あたりに目を通して置くと良いかもしれない。 というか、十角館の殺人はもう38年前の作品になっちゃったんですね……。時代の流れが一番怖っ。
余談
この記事を書いていて、叙述トリック分類というページがある事を思い出した。
色々な類型が書かれているが、圧倒的に多いのは人物に関するトリックだった。 ここに書かれているパターンを読み込んで頭の片隅に置いておけば、まず騙されることは無いと思う。 騙されたくない人は、上記ページを精読する事をオススメする。
なお、精読して、キレイに騙されたなら、それは作者が1枚上手だったと思って、諦めよう。騙されるのが嫌な人って、一部いますからね……。
「騙されて悔しい、でも気持ち良い!」
くらいのノリでミステリ読みましょうや。
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