プロジェクト・ヘイルメアリーを読んだ
アンディ・ウィアーの長編、プロジェクト・ヘイルメアリーを読んだ。 面白かった。 それに尽きる。
この作品の凄さ
とあるレビューでは、科学的な嘘がたったの2つ程となっていたが、個人的には3個だったかなと思っている。 厳密に追求するともっとたくさん出てくるけれど、それに関しては省略。 いわゆるハードSFという形を取っていて、SFうるさいおじさんをしっかり黙らせる構成になっている。
また、エンタメ小説の側面が非常に強く、難しい本を読んでいるというイメージは一切ない。語り口が軽妙で、難しい話もなるべく少なくなっている。 ある程度しっかり勉強している人なら、お、ちゃんと計算してるって分かる描写と、ど素人でも理解できる表現でそれをまとめているのは、流石といえる。
主人公の性格も救いだ。火星の人の時もそうだったが、主人公の楽観的な性格が物語の大変さをかなり軽減している。 もし、陰鬱な性格の主人公だったらこの作品は失敗していただろう。
この作品のダメな所
手放しで全部褒めてもいいが、ダメな所が無いわけでもない。
例えば、ピンチに次ぐピンチが続く描写があるのだが、(ある意味)単調に見えてしまう。何もかも上手くいくように見せかけて、大失敗をしてそれをさらに頑張ってしのぐみたいな展開が続く。 これは火星の人の時でもそうだったが、上手く行っている時ほどその後に大失敗が続く。言ってしまえばワンパターンの展開なのだ。
もちろん、ピンチの描写が非常に多彩なのでそれを「ワンパターン」という乱暴な言葉でくくる事が大変失礼だと思うが、あえてそうさせてもらった。これは、アンディ・ウィアーの癖のようなものかもしれない。
あと、たまに意味不明な文章が出てくる事がある。ある人は、誤訳だと指摘していて、なるほどと思った。 僕は原文を全部読んだわけではないので、誤訳がどれだけ含まれているか指摘はできないのだが、正確性が気になる人にとっては致命的な部分になるかもしれない。 一部そういう箇所があるだけで、全体は非常に読みやすく翻訳されているので、この翻訳がダメだったという気は毛頭ない。
総評
とても面白かった(小並感)。 ネタバレしたら面白さが全部半減するから、ほとんど書くことが無いのは確か。 息が詰まる様なピンチの連続から、最後の大団円へ向かう様は、読んでいて清々しかった。 多くの人がこの物語を楽しめるに違いない。 楽しめない人がいるとしたら、ネタバレを食らっている人か、厳密な正確性が気になる人ぐらいだろう。
SFを読んだことがない人でも、かなり気軽に読める作品なので、最初の1冊として読むのも悪くない。
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