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辻真先のたかが殺人じゃないかは、ミステリ小説における最高構成

たかが殺人じゃないかの構成は最高だった

たかが殺人じゃないかを読了した。

実は、辻真先氏の作品を読むのがこれが初。 ミステリーランキング3冠を達成した作品であり、面白いというのは前評判から知っていたが、想像を超える良さだった。

構成が素晴らしい

まずは、なんと言っても、この作品は構成が素晴らしすぎる。 ミステリファンであればあるほど、この構成に感動しない人はいないと思う。 一番最後まで読み進めて、改めて最初に戻りたくなる作品は、中々お目に掛かることが出来ないのだが、「たかが殺人じゃないか」はその稀有な作品の一つ。 多くの人が最後まで読んで、また最初に戻ったに違いない。 作品構成が往年の作家らしく非常に凝っていて、素晴らしかった。

セリフが素晴らしい

タイトルにもなっている、「たかが殺人じゃないか」は劇中のとある人物が放つ言葉なのだが、これが今の情勢と合わせて、自分には響いた。 戦争が与える影響によって、どれだけ人間が醜く歪むのかというのを端的に表したセリフであり、且つその人物のようにはなって欲しくないという作家のメッセージ性が強く表れた言葉であり、今だからこそ、改めてこのセリフの重みを感じる。 ロシアのウクライナ侵攻が無かったとしても、このセリフは非常に重みがある言葉であり、歴史の生き証人からの大切なメッセージである。 この言葉を吐く人間を今後も生み出しては行けないし、当然ながら自分もそうなってはならないと考えさせられるものだった。

とは言え、いわゆる説教臭さは皆無であり、むしろライトな印象でこのセリフが使われている所に、プロの技術の高さがにじみ出ていると感じた。

雰囲気が素晴らしい

昭和24年という、時代としては完全に失われた世界の描写が数々描かれており、それが良かった。 これは京極堂シリーズ読者からすると、ある意味「既視感」のある世界であり、別の作家を通して描かれた昭和24年というのも斬新であった。 京極夏彦以外のフィルターを通しての昭和24年は別の生々しさがあり、読んでいてとても良かった。

ミステリとして

ミステリとして読んだ場合、実は非常に明快且つシンプルすぎるため、「誰が犯人なのか」というのはかなり簡単に分かってしまう。 可能性を1個1個潰せば誰でも簡単に結論にたどり着けるからだ。 「なぜ殺したのか」の部分は、かなりの部分隠されているため、そこが明かされた時の衝撃は中々大きい。 ミステリの面白さの一つは「犯人探し」があるが、いわゆる「意外な犯人」は出て来ない。 論理の必然から、犯人は1人しかいないというのは明らかだからだ。 もし、謎解きを楽しみに読もうとしたら、この作品は謎解きとしてはそこまで難しいものでもないし、意外性も無いのでそれを期待して読むとちょっと肩透かしを食うかもしれない。

総評

ミステリ小説として明確に弱い部分はあるものの、それ以上に構成、セリフ、雰囲気が抜群に良く、純粋に青春小説としても読むことが出来るので、もし持っている人は積んだままにせずに読んで欲しい。 僕にとっては多くの人にオススメしたい作品の一つとなった。

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