棋譜
開始日時:2018/03/02 9:00:00
終了日時:2018/03/03 0:05:00
棋戦:順位戦
戦型:角換わりその他
場所:静岡県静岡市「浮月楼」
先手:三浦弘行 九段
後手:渡辺 明 棋王
▲7六歩
*先手は三浦弘行九段
*
*居飛車党の本格派。研究家としてよく知られている。
*三浦九段の棋風を一言で言うならば、「豪腕」。独特な手を指すことが多いが、それは深い研究と読みに裏付けされた物が多い。
△8四歩
*後手は渡辺明棋王。
*竜王位を失ったものの、史上初の衛生竜王であり、竜王9連覇、11期獲得という前人未到の記録保持者である。
*
*後手は8四歩と飛車先を突いて居飛車であることを明示。
*ここから振り飛車になることは滅多にない。
▲2六歩
*2六歩と突くことで、先手も居飛車であることを宣言
△3二金 ▲2五歩 △8五歩 ▲7七角 △3四歩 ▲6八銀
*かつては8八銀が多かったが、最近は6八銀が圧倒的に増えている。
*意味としては、4四歩と角交換を拒否された時に、8八に銀がいるよりは、6八にいた方が囲いに玉がスムーズに行くことができるという物。
*以前に8八銀と差されてたのは、飛車先に手厚くするという意味合いが強かったが、最近はその辺をあっさりと許すようになってきている。
△7七角成 ▲同 銀 △2二銀 ▲4八銀
*この手を上がらずに2四歩と仕掛けると、歩の交換を行ったあとに3五角と打たれて、飛車取りと5七角成が受けれなくなるので、必然の守り。
△3三銀 ▲3六歩 △6二銀 ▲3七銀
*先手は早繰り銀か、棒銀のどちらかだ。
△6四歩
*後手は腰掛銀で受ける。
▲6八玉 △6三銀 ▲7九玉 △5四銀 ▲7八金 △4四歩
▲2六銀
*棒銀。加藤一二三先生が得意としていた形だ。基本的に、将棋はだいたい棒銀になる(暴論)それほど、銀という駒の攻撃性は高い。
△5二金 ▲3五歩
*早速しかけた。
△4三銀
*こう引く事で、3四歩には同銀右と縦に銀を並べることが出来る。
*銀が縦に並ぶ形は縦からの攻撃に強く、バランスが良い。
▲5八金
*5七歩を金で守る。角交換の将棋では、5七の地点は弱点になりやすい。
△4二玉 ▲6六歩 △3一玉 ▲9六歩 △2二玉
*後手はカウンター狙いで、着々と玉を固めた。
*4三銀と引いてから既にこの着想だったのだろう。
▲9五歩
*先手はタイミングを見計らって、うまく攻めたい。
△7四歩 ▲6七金右 △3五歩 ▲同 銀 △3四歩 ▲4六銀
*棒銀で出た銀をこちらに引くことで、中央への効きを増やす。
*この局面は先手を持ちたい。
△1二香
*穴熊だ。
▲8八玉 △1一玉
*一路深く囲う事で、王手を掛かりにくくする狙い。
▲1六歩 △5四銀
*なんだこの手は!
*意味としては、4五歩と付けば銀を凹ませることが出来す。そうしてから、悠々と穴熊に囲うという事だ。
*リードを奪えそうな所では積極的にリードを奪いに行く現代将棋らしい手順。
▲3五歩
*先手も当然黙って4五歩は許せないので、こちらから反撃する。同歩なら、同銀と取って先程の5四銀を空振りさせることができる
△4五歩
*初志一貫。
▲3四歩 △同 銀 ▲3七銀
*先手の銀を追い返したものの、後手陣はバラバラ。
△4三金右
*なので、高く堅める
▲5六歩
*この手は、次に4六歩と反撃する事を目的としている。同歩、同銀、4五歩に5五銀と出る狙い。
*相手の陣形を見出しつつ、銀を捌けたらそれだけで先手がかなり有利と言える。
△4四角
*なのでそれを許さない4四角。
▲4一角
*一瞬の隙を突いた!
△7二飛 ▲4六歩
*後手陣がバラバラなので、この手が厳しい。
△4二金引 ▲4五歩 △同銀左 ▲3二角成 △同 金 ▲2四歩
△同 歩 ▲同 飛 △3三角 ▲2八飛
*この局面は角と金の交換なので、後手が駒得。しかし、陣形は先手の方が圧倒的に硬い。手番は後手という事で、ほぼ互角か、先手やや有利と見れる。
*先手陣がほぼ手付かずなので、2手くらいなら手抜きして攻めることができる。
△2二歩
*なので、後手はじっと堅める。
*先手が主導権を握り、後手はじっと反撃のチャンスを狙っている将棋だ。
▲2四歩
*三浦の腕力が発揮された手と言えよう。強引にこじ開けるつもりだ。
△8六歩
*後手も流石に受け続ける訳にはいかない。アヤを付けに行く。
▲同 歩 △8五歩
*突き捨てからの継ぎ歩の手筋だが、飛車の後援がないので、そこまで早くはない。
▲2三金
*なので、先手は強引に穴熊をこじ開けにいった。
△8六歩 ▲3二金 △同 飛 ▲8六銀
*一旦は受けて、玉頭の憂いを除いておく。
△6五歩
*その僅かな隙を突いて角筋を絡めた反撃。
▲2三金
*この攻防での焦点は3三の角。先手は無理やり角をもぎ取りに行った。
△3一歩 ▲3三金 △同 飛 ▲4四角 △4三金 ▲3三角成
△同 金 ▲4一飛
*自陣への脅威を消しつつ、相手の囲いを弱体化させて、先手で飛車を下ろす。はっきり先手有利の局面だが、攻撃の駒がないので、そう簡単な話ではない。
△6六歩 ▲7七金寄
*同金と取ると3九角で将棋が終わってしまう。
△8五歩 ▲9七銀 △7三桂
*取られそうな桂馬を逃がす実戦的な手。
▲1七桂
*こちらも桂馬を活用する。2五桂馬と跳ねると金に当たるのが痛い。
△1四角
*それを防いだ1四角。ついでに、4一の飛車にも当てている。
▲2三歩成 △同 角 ▲同飛成 △同 金 ▲3二歩
*あっさりと飛車を切り、歩を合わせる。放置して、と金を作られたら負け。
△同 歩 ▲2四歩
*痺れた。金が浮けば囲いが歩と桂馬だけになってとてもじゃないが、持たない。
△同 金 ▲4二角
*金に当てつつ、真の狙いは3一角成。
△4三飛
*それは許さんと4三飛車。必死の粘りだが、非常にいい手である。
▲3三歩
*絶望の3三歩。攻撃がつながっている。
△同 歩 ▲3二歩
*これがピッタリ。後手は受けるスペースがない。
△1四角 ▲3一歩成 △4一角 ▲同 と △3二金
*敵の打ちたい所に打て。放置して3二角は2手スキになるので、絶対に駄目
▲3一角成 △同 金 ▲同 と △2三角 ▲3二角 △同 角
▲同 と △2三角 ▲3一金 △3二角 ▲同 金 △8二飛
*ついに後手の受ける駒が無くなった。
▲4一角
*ここで先手の攻めが止まったものの、まだまだ差は十分にある。
△6五桂
*後手はとにかく差を埋めようとする。
▲6六金
*丁寧に対応。受けに役立つ金駒は簡単には渡さない。
△4一飛 ▲同 金 △8六歩 ▲7一飛
*2手スキが掛かった。無理やり受けるならば、3二角だが、そうなったら9一飛成くらいで先手は余裕で勝てる。香車を手にしたら2九香くらいで簡単に後手陣は崩壊する。
△6九角
*最後の反撃。放置すれば7八角成から8七歩成があり、危険
▲9六銀
*それを防ぐ9六銀。
△7八角成 ▲同 玉 △8七歩成 ▲同 銀 △7九金 ▲8八玉
△8九金 ▲9七玉
*丁寧に受けて躱す。危ないようだが、きっちりとしのげている。
△7七桂成 ▲8三歩
*終盤の手筋。
△同 飛
*飛車の横効きをそらすことで、3二角を実現する狙い。
▲8六歩
*もちろん、そのままだと負けてしまうので、しっかりと銀に帽子をかぶせる。
△8八金
*最後のお願い。
▲9六銀
*ここに逃げられるのが大きい。序盤でついた歩が終盤にまで生きた。
*
*ここで渡辺棋王の心が折れて投了。
*以降、後手から先手に迫る手はなく、3二角や3一金を受ける手がないので致し方のない所。
まで147手で先手の勝ち
総括
詳細の解説は↑に譲るとして、総括です。
全体的に、先手が攻めて後手が受けるという展開でした。
46手目が渡辺先生らしくない手でした。この手を堺にジリジリと差を広げられた気がします。
最近のプロの棋士は攻めが非常に鋭くなっていて、受けに回ってもそのまま押し切られるという展開が多い気がします。どちらかと言うと受けが得意な渡辺先生にとって現在は非常にやりにくい環境になったのではないかなと思っています。
一方の三浦先生はミスらしいミスがほとんど見受けられず、快勝譜と言っても過言ではないでしょう。
冤罪事件から色々ありましたが、それでも真摯に将棋に向き合ってきた三浦先生の足取りをそのまま示したような将棋でしたね。
印象的なのは69手目の2四歩。
控えて打ってからぶん殴るという豪腕三浦を感じさせる手でした。
渡辺棋王が自身のブログに書いたように、かなり調子を落としているように見受けられますが、スランプを抜けきってまたあの憎たらしいまでに強い将棋を指して欲しいものです。
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