奨励会の残酷さ
先日、第71回奨励会三段リーグが終わった。 結果は、藤本渚三段と齊藤裕也三段がそれぞれが昇段する事になった。 お二方とも、おめでとうございます。
実は、今期の奨励会三段リーグでは古田龍生三段がぶっちぎりで勝ち進んでいた。
参考: 【奨励会三段リーグ】古田龍生三段が12勝4敗に 昇段が濃厚に。
当時の空気感としては、古田三段で今期は決まり。2番手は誰かといった点が注目されていた。 しかし、最終日に事件は起きる。まさかの古田三段二連敗。 結果として、2番手、3番手についていた藤本三段と齋藤三段が抜き去ってゴールという形になった。 奨励会は本当に残酷な所だ。 どれだけ先行していたとしても、最後にコケてしまったらそれで終わりなのだから。
古田三段と齋藤三段は、年齢が近しいが、経歴が全然違う。 古田三段は第60回から三段リーグに挑戦していて、今回で11期目。5年近く三段リーグにとどまっている算段になる。年齢も25と、26歳の年齢制限が着実に近づいている。 一方、齋藤三段は、今期初挑戦ながら一期抜けという結果を出した。24歳まで二段で奮闘していたという事を考えると、彼自身もまた年齢制限が迫っていた事がうかがえる。
奨励会三段リーグは、当然ながらそこに長くとどまらずにさっさと上がることができたら一番良いのだが、そこにいる人たちが、全員死にものぐるいで上がろうとしている人たちだからこそ、簡単に上がることができない。 そんな厳しいリーグを勝ち抜くのは並大抵の事ではできない。
例えば、齊藤優希三段は第12期加古川青流戦の決勝まで進んでいるほどの実力者だが、今期の三段リーグは13位。 三段リーグ突破には、何かしらの突き抜け力が求められている。 C級2組の突き抜けに近いものを感じるが、それくらいの実力が無いとプロになる事ができない物なのかもしれない。
ここ数年の三段リーグは、古田三段や斎藤三段の世代の棋士がぼちぼちと上がっていて、その辺の厚い層が薄くなってきている時代だった。 そして、藤井聡太五冠の活躍もあいまって、最近は十代の勢いある棋士たちが三段リーグに顔を連ねるようになった。 より、具体的に年代を絞るならば、1990年代後半世代が淘汰されて、2000年代前半生まれが台頭するようになったのだ。 文字通り世代交代が始まっているさなかと言える。
その中での、今回の逆転劇には色々と思う所がある。 正直なことを言うと、僕個人の感情としては古田三段には、プロになって欲しくないという面がある。 知っている人は知っていると思うが、記録係をしている時に平然と居眠りをかましていた事がある。
記録係は将棋界に残るブラックな仕事である上、未成年にそんな事をやらせてどうなんだという問題を抱えているものの、1度だけでなく2度もやらかしてるのは流石にまずい。 対戦相手も、羽生-谷川、郷田-渡辺明と、どういう神経してたら寝れるんだというくらいビッグな顔ぶれなだけあって、色々と物申したくもなる。 これは、僕自身が昭和生まれのオッサンだからそう感じるのであって、もう少し若い人からすると、いやいや、厳しすぎでしょと思うかもしれない。
でも、普通に考えて、自分よりも明らかに強い人の将棋を学ぶ機会(=時間の使い方、立ち振舞など)である事、またインターネット中継がされている(=世間の注目が高い)事などを考えると、よほど疲れているか、あるいは、よほど失礼な人で無い限り居眠りなんかはしない。 前者であって欲しいという気持ちはあるのだが、2回もやらかしているのを見ると、後者の方だろうとレッテルを貼られても文句も言えまい。
古田三段が実力者である事は、第70回、第71回の三段リーグの記録を見れば明らかだが、なんとなくだが、このまま上がれない気がしている。 直近の3回が謎に成績が良くて、後はダブルスコアの負け越しがほとんどなので、仮に上がったとしてもそこまで目立った成績を上げることは出来ないだろう。
ちなみに、彼の成績が伸びた理由の1つは伊藤匠四段という後輩の存在が大きいに違いない。 同門の後輩に追い抜かれて、プライドが傷ついたのだろう。
古田三段に残されたチャンスはあと1回か2回。 このまま、奮闘して駆け抜けることが出来るのか、それともプロにはなれないのか。 先にも書いたように、僕個人としては、彼にプロになって欲しくない。 成績的には、上野三段は次に上がりそうな気がしているし、岩村三段も勢いがある。齊藤三段にもぜひ上がってほしい。この辺あたりが次の昇級候補と見ている。 2000年代生まれの新人が次々と三段リーグに参戦しているので、これからどんどんと新陳代謝が進んでいく。
三段リーグは、実に残酷なリーグだ。 完全実力主義の忖度のない戦い。 その結果に、観る将は一喜一憂してしまうのだ。
最後まで書いて、これ、観る将さんの方に書けば良かったなと思った(小並感)。 まあ、でもネガティブな記事なので、こっちの雑文ブログの方が僕的には最適解って事で。
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