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電王戦FINAL最終局についての私見

電王戦FINAL最終局についての私見

Vancouver Shogi Club at Moii Cafe / バンクーバー将棋クラブ

昨日、電王戦FINAL最終局が行われ、21手目で投了という幕切れで終わった。
この度、AWAKE開発者の巨瀬亮一氏が、2八角をAWAKEが指した時点で投げることを決めていたとの事で、これが賛否両論を生んでいる。
僕は、プロのプログラマとして、そしてアマチュアの将棋愛好家として、巨瀬氏の判断は大変残念な判断だったと思っている。
巨瀬氏の判断は、将棋指しとしての意地というよりは単なる自分のエゴを押し通してしまったという印象が強い。
後の発言を拾っても、概ね彼のエゴ故に投げたという見方しか出来なかった。
一方、対戦相手の阿久津先生はプロとして正しい判断をしたと思っている。

プロとは

まず、プロに関しての定義は人それぞれあるかもしれないが、僕個人の見解は、それで金を稼いでいるか否かが第一基準である。
第二基準として、クオリティを常に保っているかどうかがプロとアマチュアを分ける境界だと思っている。

プロの将棋指し

今回のケースで考えるならば、阿久津先生はプロの将棋指しだ。
口さがない言い方をするなら、将棋を指してるだけで金が貰える仕事だ。
だからといって、雑な将棋を指していたらプロとして失格。
何を持ってして雑とするかだが、自分の持てる全能力を注ぎ込んでいるか否かだ。
今回、阿久津先生が選んだ手は決して雑な手では無かったのは、棋譜を見れば分かる。
最新の注意を払い、勝率の高い手を選んで指した。
心中複雑であったが、それでもプロの将棋指しとして最も求められている事、「勝ち」への執着を見せた。
それは、プロならば当然の判断であった、と僕は評価する。
自分の美学や哲学を押しのけて指した手であり、同時に、AWAKEという対戦相手に対する最高の賛辞でもあったのだ。
中盤~終盤にかけて人間では読みきれない手を冷徹に読み切るコンピュータにどれだけリードを取るか。
阿久津先生はそれをしっかりと行っただけで、批判されるいわれは一切ない。

プロのプログラマー

巨瀬氏の発言を見ると、彼がまだアマチュアのプログラマーである事がはっきりと分かった。
彼は自分のソフトが未熟だったではなく、棋士がそういう勝ち方を選びのはどうかと述べることにより、他人に責任転嫁していた。
プロのプログラマーならば、潔く自分のソフトの作りが甘かった事を認めて最後まで指させたはずだ。
結局、巨瀬氏の中途半端さが全て台無しにしてしまった感が拭えない。
棋士として見るならば、勝負への執着が甘く、プログラマーとして見るならば、自分の作品への誇りが足りない。
どちらも二流、というよりはアマチュアであるという事を露呈したにすぎなかったと僕は思っている。
実際、彼はまだアマチュアなので、そういう行動を取ったのだろうと考えている。
これを機に、彼が周りの批評をどう受け止めるか知らないが、少なくとも、そういう評価をしている人間(僕のこと)がいる事は事実だ。

これからの将棋プログラムについて

話は変わるが、今後の将棋のプログラムについてだが、中盤~終盤にかけて凄まじく強くなっているコンピュータであるが、今回の電王戦を通して、思った以上にバグがある事が判明した。
結局、コンピュータ対人間という構図に見えるが、実際の所、プログラムを作った人間対人間の戦いに終わったということだ。
この度の電王戦のルールで、棋士がアンチコンピュータを行ったらどうなるかというのを垣間見ることが出来た
今後、磯崎氏の発言などから、彼がアンチアンチコンピュータみたいなメタいプログラムを作りそうに思えるし、実際そうなるかもしれない。 そうなると、純粋な将棋の勝負ではなく、人間同士の弱点探しみたいな勝負になり、本来の将棋との勝負とは違った所で戦う事になると思う。
それはそれで面白いけれども、そうなると専門的な知識が必要になり、非常にマニアックになるので、今回ぐらいの粒度がギリギリ一般人にも理解できる内容だったのでは無いだろうかと思っている。
興業的にはこれが限界点なのだろう。
メタゲームを楽しむのは、一部のマニアだけ!

最後に

阿久津主税先生、本当にお疲れ様でした。
あなたはプロ棋士としての意地と美学を魅せてくださり、本当に素晴らしいと思いました。
公式戦もありながら、こういった実験的な棋戦もこなしてくださり、ただただ、頭がさがる思いです。 改めて、お疲れ様でした。
ファンとしては、タイトルを取って欲しい棋士の一人なので、これをきっかけにさらなる御活躍をお祈り申し上げます。

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